それはきっと甘い束縛 〜シャルルBD創作〜

「もうひとりのきみと過ごした一ヶ月」のなかのいちエピソードです。 〜このブログでの、勝手な設定〜 ・マリナちゃんとシャルルは結婚してアルディ家で一緒に暮らしています。 ・マリナちゃんと花純ちゃんは親友です。 ・マリナちゃんは、画家として成功しています。シャルルをモデルにした絵が人気です。 それではどうぞ。 ***** 「シャルル、話があるの」 マリナに突然、壁際に追い詰められ、シャルルは眉を上げた。 「かまわないが、この両手はなんだい?」 「こういうのを壁ドン≠チていうんだって。見よう見まねよ」 「ふうん。オレには抱きつかれてるようにしか感じないが」 「うっ」 「そもそも腕の長さが致命的に足りてない」 「ううっ」 「壁ドンとやらは、多分、こうやるんだ」 くるりと反転して形成逆転。シャルルの両腕に囲いこまれ、美貌を間近に見るかたちになり、マリナは内心しまったと思った。 「……身長も全然足りてない」 上から覗き込むシャルルの瞳孔が開いている。こういう表情のときは……まずい。 ここは家の中とはいえ、廊下で。使用人がたくさんいて。ついでにいうとまだカークと警察のひとたちと美馬もいて。 「ご、ごまかさないで!シャルル、なにか、悩んでるでしょ?わかるんだからね!」 「悩んでる?」 「悩んでるっていうか、迷ってるっていうか……カークの話はなんだったの?あたしにできることがあるんだったら言ってほしいの」 マリナはわずかに頬を染め、そっぽを向きながら拗ねるように言った。 「一応、その……パ、パートナーなんだし」 シャルルは苦笑し、身体を起こした。そういうふうに攻められると陥落するしかない。マリナの手を取り、自室に向かった。 「何これ?ボタン?……穴がないけど」 ケースに入れられたものを見て、マリナは首をひねった。 「違う」 「リバーシのコマ?」 「ノン」 「……ピップエレキバン!」 「それが何か知らないが違う。これはね、発信機だ。オレが作った」 「発信機?こんなに薄いの、何で動いてるの?電池じゃないわよね?……って待って、説明されてもどうせわからないからいいわ。これがあなたを悩ませてるもの?」 「これを付けてほしい」 「あたしが?」 シャルルが神妙な様子で頷くと、マリナはしばし考えた。 「これ、痛いの?ほら、よく映画であるじゃない。注射で体の中にいれるとか?身体を切って中に埋めるとか」 「全く痛くない。服やバッグに貼り付けておけばいいだけだ」 「ならなんでそんなに悩むのよ」 「これを付ければ、キミの居場所が24時間監視される。プライバシーがなくなるだろう?」 「トイレの音が聞こえたりするわけ!?」 「音は拾わない。場所だけだ」 「ならいいわよ」 あっさり頷かれ、シャルルは内心驚いた。花純は嫌がるだろうし、怖がらせることになると、美馬は本人には言わずにとりつけようとしているのだ。護衛すらも頑なに拒否していた彼女らしい。 ……そういえば、マリナは護衛にも特に文句は言わなかった。 言おうかどうしようか迷った自分がバカみたいに感じて、シャルルは脱力し、椅子にもたれた。 「もう、そんなことだったの?何事かと思ったじゃない。……心配したんだからね!」 「普通、こんなものは付けたくないだろう?」 「なんで?あたしが、あなたに、隠すことなんて何もないわよ。何かあったらきてくれるんでしょ?道に迷ったりとか」 いま本当に心配なのは、記憶を失っている花純であって、マリナにつける必要はない。いわば保険のようなものだ。だが、これを開発したのは必要だと感じていたから。マリナは、アルディ家当主の最大のウイークポイントなのだ。 だがいざ完成すると迷いが生まれた。護衛だけで十分なのではないか。マリナに束縛しすぎだと嫌がられたりしたら。 「必ず飛んでいく」 胸のつかえがおり、シャルルは微笑んだ。マリナから思いがけず愛情のこもった言葉が聞けて嬉しくなる。本人に自覚はないようだったが。膝の上をとんとんと指先で叩いた。 「ここにきてオレにキスを」 「ちょーーーしに乗らないで!心配して損した!カークたちを見送ってくる!」 「チョコレートがあるよ。ほら」 「うっ、あ、あとでキッチンに行ってもらうからいいもん!」 「これはオレしか持ってない。ショコラティエから直接もらった特製のガナッシュだよ」 机の引き出しから取り出した箱を振ってみせたが、マリナは憤然と出て行った。 食べ物に釣られないとは、マリナも成長したものだ。 あとで、この発信機に死ぬほど感謝することになるとは。 シャルルといえど、予想のつかないことだった―――。 Fin. ***** 今日はリトモスの日でした。 レッスンの待ち時間にツイッターを見たら、Uきょたんが。 今日はシャルルの誕生日なんだって! 「なにい!!」Σ(・ω・;|||(←リトモス前のあたし) 知らなかった!! (毎年言ってるこのセリフ……) そんなわけで帰宅してからだかだか打ったらできました。 ふう、なんとか間に合ったわ〜駆け込みだけど、シャルル、ハッピーバースディ! マリナちゃんといつまでも幸せにね! 誕生日にふさわしいんだかよくわからない話ですが。 本編に組み込むにはタッチが違うかなーと迷っていたエピソードでした。 出せてよかったです。 お読みくださってありがとうございました! さえこ

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